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■魚類調査

一般に魚と言えば、川や湖、海で泳いでいる姿を思い浮かべることと思います。なかでも、種類を知っている魚は、市場に並んでいるタイやアジ、観賞用に市販されているグッピーやキンギョ、神社にある池などで泳いでいるコイなどが思いあたると思います。

日本列島及びその周辺には、およそ4000種(2002年3863種、2009年7月までの追加種220種)の魚が生息しています。日本周辺でみられる魚は、海の中に生息する種や、川の中に生息する種、海と川とを行き来する種に大きく分けることができます。さらに川の中でも、海に近い下流域、山と海との間にある平地を流れる中流域、山の中を流れる上流域でみられる種が、それぞれの種類に適した環境に生息しています。水深が浅くて流れの速い環境が好きな種もいれば、水深が深くて流れの緩やかな環境が好きな種、水草や石など隠れる場所がある環境が好きな種など、好んで生息している場所は様々です。

調査は、水温が上がり魚類の活動が活発になる、春から夏にかけて調査を行うことが多いです。また海から川に移動(遡上)してくる種類や、川から海に移動する(降下)する種類を調べるために、その時期に合わせて調査を行うこともあります。

調査には、対象となる水域に生息する種類を確認するために、様々な環境や対象となる魚の生態に適した調査方法を選びます。調査方法には、捕獲法と目視観察法の2種類があります。

●捕獲法

調査しようとする水域で、様々な環境を網羅できるように捕獲方法を選びます。捕獲した個体は、種類ごとに大きさ等を測定し、記録します。網を用いた調査では、そこに生息する魚を十分に捕えることができるようになるまでに、練習が必要なものもあります。また、魚類を自由に捕獲して良いかを確認する必要があり、申請が必要な場合は許可を得た後に、調査に入ります。後ほど、いくつかの捕獲方法を紹介します。

●目視観察法

調査しようとする水域を、水の中に潜って観察する方法と、陸上から水の中を観察する方法があります。湖や池などで潜る調査では、水深5m以上も素潜りをする場合もあり、魚の泳ぐ姿を観察します。多くの魚は常に動いており、特に流れの速い場所などではじっくり観察できることは少なく、魚影やその生息環境などから種類を判別するため、熟練した観察力が必要です。

■調査道具(漁具の紹介)

●投網
投網

水深の浅い場所や開けた場所にいる魚の捕獲に有効です。魚の集まっていると考えられる場所を判断して、魚に気付かれないように静かに近寄り、サッと投げて、ゆっくりと魚を引き寄せます。障害物などにひっかかると、広がった網の中に入るまでに逃げられる場合があるため、それらを避けるように投げるのも、技量の一つです。技量により、確認できる種類や数に差が生じやすいので、熟練者が調査を行います。

●タモ網
タモ網

水際に生育する植物や、河床の石の下、泥や砂に潜っている、比較的小さな魚の捕獲に有効です。植物帯付近では、隙間のないようにタモ網を固定して、足で踏みながら網の中に追い込むようにします。石の下の魚を捕らえるには、下流側にタモ網を固定し、石を動かしながら魚を追い込んだりします。タモ網は、比較的簡単な捕獲方法ですが、魚類の生態をよく知っている人のほうが、多くの種類を確認することができます。

●刺網
刺網

河川の特性や、捕獲したい種類によって網の大きさや種類、設置する時間帯を使い分けます。対象とする種類の大きさが明確であれば一枚網、対象とする種類が明確ではないが移動する方向が分かっている場合は二枚網、対象とする種類も移動する方向も不明瞭な場合は三枚網が有効です。他の調査方法を行う前に、魚が逃げ込みそうな場所に仕掛けておき、投網やタモ網をしながら追い込むようにすることも有効です。

●定置網
定置網

河川の特性や、捕獲したい種類によって網の大きさを使い分け、一晩設置します。設置は、魚の通り道になるところで、定置網を固定できる場所を選びます。通り道をふさぎ、魚の進行方向に合うように入口を設置し、袖網は必ず川底と隙間のないように設置し、袋網は縮まったりしないように固定します。ゴミや落葉などの流下物が、大量に袖網に引っかかると、固定部がはずれ、定置網が台無しになる場合があるので、設置場所や設置方法には注意が必要です。

●カゴ網
カゴ網

流れの緩やかな場所を好む小型の魚に有効です。特に、タモ網や投網などが使用できないブロックの隙間などで用います。他の調査方法をしている間に、市販のさなぎ粉などの練り餌を入れて、1時間程度水中に沈めておきます。カゴ網の出入り口は、流れの上下流方向に向くようにし、重りなどを入れて川底に固定します。開けた明るい場所よりも、日陰になるような場所に仕掛ける方が良いです。

●はえなわ
延縄

太めの糸と針を使って、針先に餌を一晩仕掛けて、その餌を食べにきた魚を捕獲します。そのため、対象となるのは主に肉食性の種類で、餌には現地で捕獲したエビや小魚を用いることが多いです。設置場所は、比較的大型の魚が潜んでいそうな、他の漁具が使用できない水深の深い場所や、障害物の多い場所です。事前に、地元で漁業や釣を頻繁にされている方に、潜んでいる場所を伺っておくと良いです。大きな魚を捕えることがあるので、回収するときは針にかかった魚を逃がさないよう注意が必要です。

●どう
どう

竹などで編んだ筒状の仕掛けを、一晩仕掛けて、ウナギやナマズなど夜行性の種類を捕獲します。設置場所は、ウナギやナマズの通り道と考えられる場所や、潜んでいるような深い場所や、障害物の多い場所です。事前に、地元で漁業や釣を頻繁にされている方に、潜んでいる場所や、好餌などの情報を把握しておくと良いです。