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■底生動物調査

底生動物と聞いても、どんな動物なのか分かる人は少ないと思いますが、水中で生活する魚類以外の水生生物全般のことを指しています。一般的には、無脊椎の水生生物全般を指し(プランクトンを除く)、その中には、カゲロウやトビケラなどの水生昆虫類、エビやカニなどの甲殻類、タニシやシジミなどの貝類、ミミズ類などの環形動物類など様々な種類が含まれています。身近な水生生物としては、川の石などをひっくり返してみると観察できる小さな昆虫や、岸際で網を水草につっこんで遊んでいると獲れるエビの仲間などがあげられます。

調査で確認される底生動物の多くは、水生昆虫の仲間です。陸上昆虫も含め、昆虫の多くの種類は、卵→幼虫→蛹→成虫という生活史があります。底生動物調査で対象となる水生昆虫は、卵や幼虫の間など生活史の一部を水中で過ごしている種類で、羽化後の成虫は陸上で生活します。羽化する時期は種類によって差はありますが、暖かい春に成虫になる種類が多いため、一般的に水生昆虫の調査に適しているのは、羽化前で大きく成長し種類が判別しやすい早春季です。あらゆる底生動物を確認するためには、早春季だけでなく、秋季に羽化する水生昆虫の羽化前と、甲殻類などの活動が活発な時期にあたる夏季も合わせて調査をすることが多いです。また、水生昆虫の中には積雪期に成虫がみられる種類、甲殻類の中には海から川へ、川から海へ移動する種類などもいます。それらを調べるために、その時期に合わせて調査に出かけることもあります。

底生動物は、その種ごとに水の中の様々な環境を利用して生活しています。川の底に転がっている石や、砂や泥の中、水際に生育する植物の上や隙間、落ち葉などが溜まっている場所、ブロックや大きな巨石の隙間などがあげられます。そのため、対象となる水域に生息する種類の全てを確認するためには、様々な環境を網羅できるように調査することが大切です。

調査には、どのような種類がどれくらい生息しているかを定量的に把握するための定量採集と、どのような種類が生息しているかを把握するための定性採集の2つの方法があります。底生動物の中には、現地で種類が分かる場合もありますが、ほとんどの種類は現地から持ち帰り、室内で実体顕微鏡などを用いて判別します。

■定量採集

サーバーネット

一定面積を採集できる道具(サーバーネットやエクマンバージ採泥器)を用いて調査をします。河川では、対象となる水域が、淡水域か汽水域かによって、採集に適した場所と方法が異なります。淡水域では、流速が速く膝程度の水深の瀬で、サーバーネットを用いて採集します。汽水域では、干潮時に水深が浅くなるところでは、枠を設定してスコップなどで砂を集めます。水深が深いところではエクマンバージ採泥器を用いて採集します。

■定性採集

対象となる水域に存在する、あらゆる環境で採集を行います。基本的には、タモ網で採集しますが、それぞれの環境に生息する種類を、確認するために採集方法を工夫する必要があります。例えば、大型のエビ・カニ類が生息しているような場所では、サデ網を用いた採集やカニカゴを仕掛けるといった方法があります。また、人が入れないような深いところを調査するには、エクマンバージ採泥器やドレッジ等で底泥をすくい取ったり、長い柄のついたジョレン(貝取り)を用いたりもします。干潟では、カニ類が群れていることが多く、巣穴を掘っているため、近寄ると逃げてしまいます。そのため、大型の生息孔がある場合は、そこを掘り返して生物を採集します。このように、定性調査では、底生動物の生態を知っている人が調査することにより、生息している種類を偏りなく把握することができるのです。

■調査道具

(定量調査)
●サーバーネット
サーバーネット

一定面積を区切る枠と、底生動物を集めるためのネットが組み合わさったものです。河川での採集には、25cm、33cm、50cmなどの方形枠で、小型の底生動物も採集できるように、およそ0.5mmの目合を用いることが多いです。採集する河床に方形枠を設置し、その枠内に生息する底生動物を採集します。大きな石に付着しているものは手やピンセットで採集し、石や砂をよくかき回します。

●エクマンバージ採泥器
エクマンバージ採泥器

浅海や湖沼、小型の底生動物の採集には大きさが15cm、25cmのものがよく使用されています。底質が泥の場合は採集しやすいのですが、砂礫質であったり、底に水生植物が繁茂していたりすると、採泥器の口が閉まらず、十分に採集できない場合があります。調査をしていると、エクマンバージ採泥器から伝わる感覚から、底質や底の状態を予測することができるようになります。

(定性調査)
●タモ網
タモ網

タモ網のフレームがD型のネットを使用します。淡水域では、網の目合いはおよそ1mm程度のものを使用しています。タモ網は、様々な環境で利用する調査道具で、使用頻度も高いため、網が破れやすくこまめに修理をする必要があります。

●ジョレン(貝取り)

ジョレンといっても、土や砂をならすような農作業に用いるようなものではなく、貝取りのために金具部分に隙間が多く、砂や泥などは落ちる構造になっています。

●カニカゴ
カニカゴ

タモ網や投網などが使用できないブロックの隙間などに仕掛けます。魚やイカなど、比較的臭いのあるものを餌袋に入れて水中に沈めます。カゴ網の出入り口は、流れの上下流方向に向くようにし、重りなどを入れて川底に固定します。